卒業論文・修士論文を書く人へ

九州大学情報基盤研究開発センター 天野浩文

この文書は,初めて卒業論文・修士論文を書こうとする人に最低限守って欲しいと天野が思うような,論文のスタイルをまとめたものである.ただし,研 究室によっては,これとは異なる方針を持っておられるところもあると思うので,注意して欲しい.

「スタイルなんてどうでもいいじゃん」などとは,決して思わないで欲 しい. 多くの場合,体裁も整っていない論文は「きっと中身も出来が悪いに違いない」 という先入観を与えがちである.そして,私の経験からすると, その先入観はしばしば当たっている.

もちろん,整っているからといってそれがいい論文であるとは言えないが,体裁 に問題があるようでは,すでに「読みやすさ」の点で論文の備えるべき資質を欠 いている.

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目次

1.タイトル

2.論文の構成

3.本文執筆上の注意

4.参考文献リストの作り方

おまけ:
論文の提出までの作法


1.タイトル

論文のタイトルは,あまり範囲を広げ過ぎず, 自分のやった仕事を的確に表すものを考えることが重要である. ただし,あまり長すぎるのもよろしくないので,なかなか難しい.

2.論文の構成

第2章では,卒業論文・修士論文の標準的な章立てについて述べる.
(第X章のタイトルと第X.1節の間の部分には, こんなふうにその章の概要説明を書くようにするとよい. また,わざわざ節立てする程もなさそうなこと(説明)もあれば, ここに書くとよい。)

2.1   章の構成

2.2   論文の標準的な構成

まず,冒頭には,章番号のつかないパートがある. ここまでの概要と目次には章番号を付けない.また,通常,概要と目次までのペー ジ番号には,ローマ数字(i, ii, iii, iv, ...)を用いる.

これ以降,章番号を付け始める.また,ページ番号はアラビア数字(1, 2, 3, ...)に切り替わり,リセットされて1から始まる.

  1. まえがき(はじめに、序論)(Introduction)
    -----最低でも2〜3ページ

  2. (基本的事項)
    -----(論文の大半をこの章が占めるようなことにならない限り)好きなだけ書く。
    ----- 5ページでは少ない。

    「基本的事項(Basic Concepts)」そのものをタイトルにするのは,理論系の論文 ではときどき見かける. その場合,ここでは,記号の意味や数学的・論理的な概念の説明が(他の 参考文献を読まなくてもよい程度に)詳細に説明される.一方,システム系の論 文で「基本的事項」というタイトルを使うのはあまりポピュラーでないので,もっ と内容を的確に表すタイトルを付けること.「◯◯,□□および××」というよ うな三題噺のようなのはできれば避けたいが.

  3. 研究内容の具体的説明
    -----好きなだけ書く.ただし,20ページにもなるようなら,章の分割を考えること.

    実験で性能評価をするときには,その説明は次の章(4章)で別にしても よい.

  4. むすび(おわりに、結論)(Conclusion,Concluding Remarks)
    -----最低でも1〜2ページ

    この章の表題はそれぞれ1章に対応した語句で

     まえがきむすび
     序論結論
     はじめにおわりに

    研究の目的・目標と,それをどのように,どこまで達成したか,まとめる.
    さらに,この成果の応用・効果としてどのようなことが考えられるか,述べる.
    最後に今後の課題を述べるのもよいが,あまり適当なことを書かないこと.何が未解決で, それを解決するために(場合によっては自分の後を引き継ぐ人が)どのようなことに取り組むべきだと自分が考えているか,きっちり書くこと.

    4章を「実験および性能評価」などにしたときは,ここは5章になる.もう少し章が増えることもあるかも知れないが, 章を分割しすぎて各章があまり散慢にならないように.

これ以降の章には,章番号を付けない(LaTeXでは,\chapter*{}になるだろう).

3.本文執筆上の注意


4.参考文献リストの作り方


論文の提出までの作法

あまり学生さんに礼儀作法をとやかく言える人間だと自分では思っていないが, それでも,論文の提出前にできるだけ目を通してよりよい方向に案内してあげる ために,これだけは守って欲しいと考えていることがいくつかある.
  1. 提出締め切り直前になってからどんと全部持って来ない で欲しい.先生から「論文どうなってる?」と聞かれるまでじっと待ってい ないで欲しい.

    先生だって人間なのだ.機械のように高速に読み込んでいっきに朱入れでき るわけではない.出張や会議や他の学生さんの論文のチェックだってある.自分が修正する時間が確保できるように締め切りよりも余裕を持って返して 欲しい,と思うのなら,その分早めに持ってきてもらいたいし,すぐにレスポンスが欲しいのなら,章ごと・節ごとなど,短時間で返せる量に区切っ て持ってきてもらいたい.

    もし今すぐには持って行けない/メールで送れないけれど,だいたいいつぐ らいに時間を取って欲しいと思うのなら,事前に相談して欲しい.何度も言 うようだが,残念ながら他にもやらなければならないことはたくさんあって, 突然言われても時間を取れないことは多いのだ.

    また,これは本当に申しわけないことなのだが,他の用事で忙殺 されていて,本当にこちらからの催促が遅くなってしまうこともある.教官が 「どうなってる?」と聞いてこないからといって,まだまだ大丈夫だとは思 わないで欲しい.

    もし仮に,「あんまり早く持っていくと,大幅な書き直しを求められて大変 だから,ぎりぎりに持っていこう」なんて考えているのなら,それは甘い考 えだ. もし仮に,こんなのでは卒論・修論として到底許しがたいと考えたら,少し くらい非情だと思われても,時間的に厳しいような修正を要求する覚悟はある.

  2. 朱入れされた原稿を受け取るだけでなく,説明や質問を 受ける時間をとって欲しい.

    どういう意図でそれを書いたのか,本人に聞いてからでないとコメントでき ないことがある.「机の上に置いておいていただければ」などと考えず,口頭での説明やアドバイスを受けられるように考えて欲しい.

  3. 修正を求められたら,それがなぜなのかよく考えて,同 じ指摘を繰り返し受けなくて済むようにして欲しい.

    これは,主に論文を書く際の文章の書き方とかスタイルに関するコメントに あてはまることなのだが,同じことを何度も何度も繰り返し修正するのは, 言うほうも聞かされるほうも大変疲れるものだ.また,体裁などよりもその 論文で提案する内容や報告する結果に関する議論をできる限り深めたいと考えている.不毛な時間を減らすためにも,ぜひ協力して欲しい.

    ちょっと偉そうに このようなページ を作って公開することにしたのも,そんな気持ちからである.

  4. 他人の知的所有権は尊重すること.自分ですべき仕事は 自分ですること.

    まず,原著者や著作権所有者の了解を得ない盗作や剽窃は犯罪である.

    もちろん,長い論文では第2章,短いものでは第2節で,その論文を理解する のに必要な事項を整理することは多い.このような場合,他人の著作を要約したり引用したりすることも必要になるだろうが,その場合には,きちんと 参考文献を明示して行うべきである.

    次に,所有者が自由にお使いくださいとばかりに公開している情報ではどう だろうか? 最近では,webサイトで公開されている情報をファイルに取り 込んでそのまま利用するのも難しくない.時間のないときにはそのような行 為でページ数を増やすという誘惑にかられることもあるだろう.あるいは先輩や友人のファイルからコピーさせてもらう,ということだって可能かも知 れない.

    しかし,持ち主の了解があるから何をしてもよいということにはならない. 卒業論文・修士論文の目的のひとつは,提出者がそのような論文を自分でまとめる能力を持っているかどうかを判定することである.みなさんはそれを 自分で証明して見せる義務を負っている.たとえ能力があっても,他人の著作を流用したのでは,それを証明したことにならない.もし流用が露見して しまったら,自分の能力を証明する機会を自らつぶすことになり,能力を持っていないと推定されても文句は言えなくなるのだということをよく覚えてお いて欲しい.